2日目ー絶叫と嬌声ー

 前日、体を吊られたまま望まぬ絶頂を叩きつけられた梓だったが、安息は訪れない。
 暦的には日曜日。今日も沙羅が、やってくる。
「良い眺めだな、猫」
「悪趣味、なんだよっ、おばさん」
 そして現在。
 4つの穴が空いた台座に、両腕両足をそれぞれ拘束され。
 滑らかな背中も肉感的な尻も、窄まった菊門も陰部もすべて晒して四つん這いにされた梓は、尖った目で沙羅を見上げていた。
 素直に感心した声を上げて、沙羅はくつくつと笑う。
「お前はてっきり、初日で折れると思っていたがな。存外丈夫らしい」
「へっ、……。天才ちゃんを、舐めんな、よ」
「ああ、これなら少し強度を上げても耐えられるだろう」
 不穏なことを言って、沙羅はベルトを複数締めた歪なスーツのうちから、一本の鞭を取り出した。
 四つん這いの梓は、馬鹿にしたように笑う。
「また、それ? 芸がないと飽きられちゃうぜ、おばさん」
「その減らず口、明日も聞けたら褒めてやる」
 沙羅が取り出したのは、細くて長くて黒い鞭で。
 昨日のバラ鞭の感覚を思い出して歯を食いしばる梓に、沙羅は軽くその鞭を振るった。
 ひゅ、と軽い音の後。
 ピシィ! と空気を裂き背中の皮膚を打つ音が、牢に響いた。
 そして、野茨梓は、背中を丸めて絶叫する。
「………ひっ、あああああああああああああっ!」
 桁が、違った。
 バラ鞭なんて比ではない。神経をむき出しにされて、ヤスリで削られたようだった。一本線のように痛みの爆心地が背中を斜めに貫き、そこを中心に、びくびくと体が痙攣する。
 一発で、梓の体はじっとりと汗に濡れてしまった。
 その髪を掴んで、沙羅は上から覗き込む。
「軽く当てただけでその体たらくか? ん?」
「………くっ、ああ……、あ、ぅ」
「おいおい、頑張ってくれ。背中をさすれば元に戻るのか」
「やめろっ、今背中に触るな! くぅぅぅううっ」
 ざりざりと背中を撫でられて、歯を食いしばる梓。滲んだ汗が痛む皮膚に滴って刺すような痛みが走った。
 台座をがたがたと揺らして尻を振る梓を見下ろして、沙羅はポケットから、振動片を取り出した。
「さて、痛いばかりでも退屈だろうからな。楽しもうじゃないか」 
 嗜虐が、始まる。
  
■■■
  
「あ、あああっ。くっそ、離せ、よっ。押し付けんなぁ、……っく、ふぅ」
「せっかくの好意を無下にするものじゃないぞ」
「なにが好意だ、この変態っ、………っう、ぅうう、っはぁ」
 板状の振動片をオンにして革靴のつま先に載せて。 
 梓の尻側に椅子を置いた沙羅は、その振動片を靴ごと梓の股間に押し付けていた。
 足を組んだ沙羅に、屈辱的な格好で秘部を責められて、梓は悔しさと湧き上がる快楽に顔を歪ませる。
 ぐりぐりと革靴で梓の股間を押して、沙羅は淡々と告げた。
「おい、お前の愛液で私の靴が汚れるだろう。そんな恰好で濡らして恥ずかしくないのか」
「だま、れ」
「肛門も拡縮してるわ敵に尻は振るわ、まったくもって情けない。慎みも恥も知らないようだな」
「だ、まれよぉっ!」
 いくら叫んでも、体の反応は止まらない。
 沙羅に見せつけるように双尻をうねらせて、前は前で豊かな胸をふるふると振るわせて、梓は下を向いて必死に快楽を耐える。
 絶頂だけは迎えてはいけない。
 すでに三本になった背中の痛線を背負って、梓は太腿を伝って台座まで淫液が伝っているのを感じながらも、必死に体を制御していた。
 その努力を後ろから見ていて、沙羅はぞくぞくと自分の加虐心が湧きたつのを感じる。
「少し休ませてやろう」
 器用に足を動かし、振動片を少しだけずらす。
 陰核には振動が加わらないように、菊門、会陰、陰唇を覆うように場所を変えた。
「あ、………はあ、ぁ」
 楽になったようなもどかしくなったような、中途半端な刺激を受けて声を漏らす梓に、沙羅は愉快そうに言った。
「10秒後、最大振動で陰核を覆う。必死に耐えるんだな」
「そんなの……っ!」
 10, 9, 8……。と梓の抗議を無視して、沙羅はカウントを始める。
 女にしては低い、臓腑にずしりと響く声で無機質に告げられて、梓は体をこわばらせてその時に備えた。
 備えた、が。
 焦らすような振動に加え、いきなりの陰核への衝撃。
 ゼロ。という沙羅の声と共に振動片がぷっくりと膨れた肉芽を襲って、梓は濡れ羽色の髪を振り乱して叫んだ。
「ああああ、ん、んんんんっ、あはああああああああっ!」
「果てるか? まあ、私は構わないがな」
「い、やだっ! もういやだ! いや、なのにぃぃ! イ……っ、あっ、あっ!」
 びくん、びくんっ! と沙羅の目の前の腰が浮く。
 棒を飲んだように体がぴんっ、と一直線になって、梓は絞り出すような嬌声を上げた。
「あああっ! っくぅぅぅうううううううううっ!」
「おいおい……。手間をかけさせるなよ」
 ぷしっ、と革靴にはねた潮を梓の太腿に擦り付けて、沙羅はため息をついた。
 その手が鞭を取り出すのを見て、梓はがたがたと台座を揺らす。
「いや、いや……っ」
「果てるたび鞭打つ。そういう約束だっただろう」
「いやだっ! いやだあ、いっ、ぎぃぃいいいいいいいいっ!」
 ビシィっ! と皮膚が裂ける音が響いて、梓は絶頂で震えていた体を、今度は痛みで硬直させた。
 股間からは愛液をたらたらと滴らせ、背中は鞭打たれて赤い線ができている梓を見て、沙羅は吐き捨てた。
「無様だな、天才」
「……う、っさいん、だよ」
 打ち方はまだまだ緩いが、種類としては最も痛みの激しい鞭を持ってきた。
 それで4回打たれて、なお涙に濡れた目を尖らせる梓に、沙羅は内心で恍惚としていた。
 そしてそれをおくびにも出さずに、目線を合わせて梓の顎を持ち上げる。
「さて、無様なお前に命令がある」
「……くっ。なんだよ。私が、従うとでも……」
「聞くだけ聞けよ。開発部の薬学系がな。感度を異常に活性化させる薬と、それを無効化させる不感剤を欲しがっているらしい。そこでお前だ」
 表向き、警備部部長で通っている沙羅は、だが裏では研究所の全権にアクセスできる。
 だから、梓の2つ名も、できることも、弱点も正確に把握していた。
「『全専攻』のお前を寝かせておくのは惜しいからな。平日はここで働け。備品は責任を持って支給する」
「だから、私がそれに従うとでも……っ!」
「従うさ」
 静かに言って、沙羅は立ちあがる。
 鞭打ちに体を震わせる梓は、しかしまだわかっていないようで、純粋培養の無知さに愛しさすら湧いてきた。
「確かにこいつは、雑に振ってもバラ鞭よりは痛いがな」
 さっきまで、沙羅は1割ほどの強さでしか振っていなかった。
 当てている場所も根元で、もっとも加速する先端をわざと外していた。
 それらの容赦を、取っ払う。
 180センチに達する引き締まった女体をフルに使って体ごとしならせ、沙羅は全力で、梓の背中を打ち据えた。
 ピッシィィィィィィンッ‼ と、鼓膜が刻まれそうな音は、一拍遅れてやってきた。
「いッ‼ ―――~~~~~~~~ッッッ‼」
 体を裂かれたような痛みを受けて、梓はほとんど動かない背中を丸めて、顎が外れるほど口を開ける。
 余りの痛みに、声を出すこともできなかった。
 そして。
 愛液とは違う、まとまった量の液体が迸って、沙羅は排泄溝の下に梓の台座を蹴飛ばした。
「漏らすなよ。臭いがつくだろ」
「あ、あぁ、……ぅ、うっ」
 台座に腕と足の肉を食いこませ、力を失ってがくりと項垂れる梓は、失禁したまま体に残り続ける痛みに呻く。
 その顔を、ぱしん、と容赦なく張って、沙羅はもう一度問いかけた。
「お前は私の命令を、拒むのか?」
 
■■■
 
 いたい。
 痛い痛い痛い。
 ―――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!
 背骨が見えていますと言われても、嘘だとは思わなかった。
 それだけの痛みを背負って、朦朧とした頭を上げさせられた梓は。
 沙羅の顔を見て、同時に2つの感情が湧き上がってきた。
 一つは、恐怖だ。
 この女は、私が首を振れば何発でも、何十発でも同じことを繰り返すだろう。一発で心を折られそうになっているさっきの、アレをだ。それは怖い。当然のように怖い。もしかしたら、殺されてしまうかもしれない、とまで思う。
 しかし、同時に怒りも覚えていた。
 復讐心、とも言い換えられるか。
 私を虐めるこいつが憎い。どうにかして目にもの見せてやりたい。その冷めた顔を苦悶にゆがめて踏んづけてやりたい。
 全裸、四つん這い、胸も尻も全部晒して、失禁までさせられて。
―――許しておけるわけ……っ!
「『許しておけるわけない』といった顔だな」
 見透かされたような沙羅の声に、ドキリとする。
 冷笑を浮かべて、鬼才は言った。
「拷問も、ずいぶんとやったからな。お前らの心理は大体わかる。でもな、違うんだよ」
 首を振って、沙羅は梓に顔を近づけた。
「お前は選択を間違えた」
 ―――ただ我慢するだけのやつなんか、簡単に折れる。
 そういう人間を折るのが楽しいから、これ以上の助言はしないが。
『堕ちた振りをして隙を伺う』というのが、最適解だ。
 そして沙羅は、再び振動片をオンにして、尿と愛液でとろとろになった股間にそれを押し付けた。
「ひゃうっ! ちょ、っとぉ、く、そ、あああ、あ、ん……っ」
「お前が折れるまで、再開だな。ちなみに次から、果てたらさっきの全力だぞ」
「ひっ、いや、いやだ、ああああ、あああああああっ!」
 必死に首を振るも、囚われ四肢を戒められている梓は振動を受け止めることしかできず。
 早くも昂っていく体を、絶望的な気分で震わせた。
 
■■■
 
 梓が沙羅の申し出を受けたのは、9回目の鞭打ちの直後だった。
 しかし、愛液と尿と涎と汗と涙と、あらゆる体液でどろどろになった梓に、沙羅はさらに5発ほど、本気の鞭打ちを浴びせかけた。

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