92日目―望まぬ再会(後編)―

 鞭打ちの裂傷も治り、白い肌を隠すでもなく晒して、梓はアイリーンの後ろに立つ。
 その顔をぼんやりと見て、それから焦点を合わせて、蛍はひく、と頬を引きつらせた。
「…………金髪」
「アイリーンよ」
「………なにしたんだよ?」
 外側は梓だろう。小さな体も、不相応に大きな胸も、艶のある黒髪も童顔も。
 だが、顔からは一切の表情が抜け落ちていて、目は虚ろでハイライトがない。焦点が合っているのかもわからない。
 アイリーンが飼っている奴隷のようになり果てた梓をみて、最悪の想像に怖気が走る。
「あんた、まさか………」
「いや、さすがに誤解よ」
 ゆるゆると首を振って、アイリーンは嫌そうに梓の頬を叩く。
「こんなだけど、頭脳特化の最高戦力だからね。ちゃんと丁寧に、心だけを砕いたのよ。まあ、ここまで無になるとは思わなかったけど」
 昼間はあかりと蛍の声をランダムに聴かせながら延々と棺桶に閉じ込めた。
 夜はあかりとアイリーンと沙羅で物理的に体を挟んでイかせ続けた。
 そうしたら、3日と持たずに梓は従順になった。
 すがるように梓に目を向けて、蛍は必死に首を振る。
「ねえ、噓でしょ、ねえっ! あんた前は100日耐えたんでしょ⁉ なに数日で堕とされてんのよこの馬鹿!」
「100日? ああ」
 そんなこと言ってたのか、こいつ。
 冷笑して、アイリーンは梓の頬を思いっきり張る。抵抗もなくごとりと床に転がる梓の頭を踏む。
「それ、嘘だから」
「は? いや、でも………」
「いや、嘘じゃないんだけどさ。実際は、50日弱でこいつがぶっ壊れて、平時の人格をサルベージさせるのに50日強かかったってだけよ。たぶんその過程で本人に都合のいい記憶が捏造されたんでしょうね」
 一度折れたものは、折りやすい。
 蛍との記憶で補強していたようだが、それを取り上げれば脆いものだった。
 アイリーンは、研究結果を自慢するように続ける。
「そんなわけで、私はこれからあかりと仲良く愛し合うから。あなたたちも、楽しみなさい?」
 そして、梓に囁く。
「蛍さん、お尻が感じるみたいだから。たくさん舐めてあげなさいね」
「…………………」
「ねえ、ちょっと……嘘でしょ、あずさ、ぁ」
 抵抗なく背後に回り膝をつく梓を見て、アイリーンは牢屋を出る。
 一応、蛍とあかりを同時に並べるのは避けたが、どうやら杞憂だったようだ。
 先ほどよりも苦し気に、しかしずっと甘やかな喘ぎ声が、牢獄に響いていた。

■■■

「……ね、ぇ! もう、っこのぉ……っくあああ!」
 窄まった襞を一本一本なぞるように丁寧に舐められて、蛍はもうごまかしようもなく感じてしまっている事実に泣きそうになる。
 排泄器官で感じさせられるおぞましさと、舐められている相手が梓であるせいで否応なしに高まっていく快楽の狭間で悶え狂う。
 梓のものとわかる小さな手が、尻割れに食い込んで、ぐいっと開かされる。
 すー、と上から下へ、下から上へ何度も舐め這わされて、蛍は体をこわばらせた。
「あああ……、っふぅ、あ」
 それ自体は、果てるには足りない。
 だけど、過去に媚毒に侵された菊門と、その中は例外で。
 ついに梓の舌が蛍の中に入ってきてくる。
 蛍ははっきりと絶頂に至る予感を感じて、がしゃがしゃと枷を慣らした。
「おねがい、やめてよ! 話、聞いてよっ! あ、あああっ! んんんっ!」
「……………」
 ちゅぷ、ちゅぷと舌を出し入れされて、昂らされる。
 梓に自身の一番汚い所を舐められていると考えてしまい、背徳感と官能が同時に襲い掛かる。そして自分の惨めさも、際立つ。
 裸にされて、女に尻穴を舐められて感じるような体にされて、喘ぎ続ける。
 つん、と鼻の頭が熱くなるのを無理やりこらえる。
 しかし、絶頂をこらえるのは、無理だった。
「あ、あ……、あ、ひゃ、んあっ! あああああああっ! っが、っぐあっ!」
 バチバチという電撃で、また寸止めを強要されて体が熱く燃える。
 蛍の動きなど気にも留めず、延々と菊門を舐め続ける梓に、蛍はずっと悶え続けた。

■■■

「ふふ、可愛かったわよ。あかり」
「あ、りがと……う、ございます」
 張形を模したバンドを取り外し、アイリーンは愛しい恋人の頬にキスを落とす。
 夕食時には少し遅いような時間で、肩で息をするあかりに確認する。
「そろそろ、あれ持ってこうかしら」
「はあ………。重いんですよねぇ」
 目線の先には、元々は安眠用、今は拷問器具の棺桶がある。開発部のサービス精神の賜物なのか、中に水をためることもできる。
「私の趣味ではないのだけど、まあ元々感度がぶっ壊れている蛍さんだし」
「不感剤があるから、まあよしです……。嫌ですけど」
 貯めるのはもちろん水ではない。
 梓が作った媚毒の原液をたっぷり入れて、蛍と梓を一緒に沈める。
 どんな狂態を晒してくれるのかしら、と想像して、アイリーンは笑った。

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